SHIBUYA SMART DRINKING PROJECT

REPORT

2022.12.08

SIW2022 レポート・Conference「Smart Drinking – すべての人が楽しめる新しいドリンクカルチャーの創出」

アイデアと触れあう、渋谷の6日間——“渋谷アイデア会議”をテーマに多数のトークセッションやワークショップ、体験ブースなどが展開される「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2022」(以下、SIW)において、スマートドリンキングに関する複数のコンテンツが展開されました

ここでは、スマドリのカルチャーやスタイルについて意見を交わしたカンファレンスセッションの模様をレポートします。

SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2022
Conference

「Smart Drinking – すべての人が楽しめる新しいドリンクカルチャーの創出 – 若者が飲み会を再定義する!
11.10 (木) 14:15-15:00
@渋谷ストリームホール
<登壇>
西原 香織(アサヒビール株式会社 企画・支援本部 コーポレートコミュニケーション部 担当副部長)
長田 麻衣(株式会社SHIBUYA109エンタテイメント ソリューション戦略部 SHIBUYA109 lab.所長)
山本 朝陽(YouTuber【ミュータントウェーブ】)
長田 新子(SIW エクゼクティブプロデューサー / 渋谷未来デザイン 理事)

「飲み会」以外の名称を!アンコンシャスバイアスがなくお酒を楽しめる方法とは?

まず冒頭で、アサヒビールの西原さんが、近年のお酒の飲み方の変化をデータとともに提示します。生活習慣病リスクを高める1日のアルコール摂取量は男性で40グラム、女性で20グラムとされていて、おおよそビールだと500ミリリットル、アルコール度数7%の缶チューハイだと350ミリリットルでおおよそ20グラムです。

この量を摂取している割合を2010年と2019年で比較すると、男性が15.3%から14.9%と微減。女性は7.5%から9.1%と増加しています。この背景には、ライフスタイルの変化、女性の社会進出、飲みやすいお酒も増えてきたなどが考えられると西原さんは説明します。

お酒の飲み方も時代背景や社会、文化とともに変化してきているひとつの事実をもとに、これからのお酒の飲み方、飲み会はどうあるべきか?のテーマへと進みます。まず渋谷の流行発信地である109でマーケティングを担当し、普段からZ世代とコミュニケーションを取っている長田麻衣さんは、このように語ります。

「Z世代の飲み会は、強要がなくなってきています。飲む人と飲まない人に壁がなくて、お酒を飲める場所・空間には注目が集まっています。たとえば、夜の大人っぽいバーとかの雰囲気や空間に魅力を感じている人が多い印象です」(長田麻衣さん)

一方、トランスジェンダーでもあり、「お酒を飲めない代表」として本セッションに参加した山本さんも長田さんの発言に賛同を示し、

「ちょっと前まで飲み会の場所で『飲めないんです』と言うと、変な間が生まれていました(笑)。いまでは割と自然になっていますし、僕自身も飲み会の場は好きです。普段とは違うコミュニケーションができて、より親しみが生まれると場だと思います」(山本さん)

飲める人と飲めない人。この間にはアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)がこれまで根強くあります。同時に遠慮をしてしまうこともあると「飲める代表」の長田麻衣さんは飲めない人に対しての不安として「酔って変なことを言っていないか」「私はいっぱい飲んでいるのに割り勘でいいのか」として挙げます。さらにさまざまなハラスメントが指摘されるリスクがある現代社会で、「若い人は飲み会が嫌い」というアンコンシャスバイアスも作用しているのでは?と問題提起しました。

「大人も飲みに誘うのは怖くなっている。Z世代だとくくるのも良くないんです。それぞれに話を聞くと、先輩に誘ってほしいと思っている子は意外と多い。お酒ありきで考えてしまうと、誘いにくいし、誘われた若い世代も飲まなくてはいけないのか?という心理が働きます。『飲み会』って言葉を変えたいですね(笑)」(長田麻衣さん)

「確かに僕から誘うときは『飲みにいこう』ではなく『ご飯いこう』になりますね(笑)。お酒は飲めないけど、飲み会の場は好きですし、飲む飲めない飲まないに関わらず、フラットにコミュニケーションができるようになるといいですし、飲めない人も楽しめるようにドリンクメニューが増えるとうれしい。まだまだお店は飲める人前提のメニュー構成になっています」(山本さん)

2022年6月30日にオープンした『SUMADORI-BAR SHIBUYA』は、スマートドリンキングの考えに基づき、アルコール度数が選べるドリンク、充実したノンアルコールドリンク、コミュニケーションの空間としての食事メニューやデザインにもこだわっています。しかし、まだまだこのようなお店が少ないのは事実で、今後どのように輪を広げていくか?が重要なポイントとなります。

「やはり相互の理解が非常に重要です。どちらもアンコンシャスバイアスが働いて、遠慮している。飲み過ぎないように自分の体質を知ってもらうことも大切ですが、自分と違う体質や気持ちの人がいることを知るのがもっとも重要ですね」(西原さん)

「せっかく集まって楽しもうとしているのにみんなが飲まない」「これ以上飲めないのに言いにくい」「つきあいが悪いと思われたくない」などなど皆さんも飲み会の場で経験したことはないでしょうか? でも、その気持ちや疑問は心のなかで自己完結しており、互いにコミュニケーションまでは至らないケースが多いはずです。もう一歩、相互で寄り添う、正直に気持ちを述べることでもっと気持ちいいコミュニケーションとお酒が楽しめる「場」が生まれるのではないでしょうか。